妊娠中に歯科医院でレントゲンを勧められると、お腹の赤ちゃんに影響はないか心配になりますよね。
歯科用レントゲンはもともと被ばく量がきわめて少なく、通常の診療で胎児に影響は出にくいとされています。
ただし、撮影する際は、妊娠週数や体調に合わせたタイミングを選ぶことが大切です。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 妊娠中でも歯科レントゲンが撮影できる理由
- 安心して歯科レントゲン撮影する3つのポイント
- レントゲン撮影でわかる3つのこと
- 【時期別】妊娠中に歯科治療で行うこと
- 妊娠中に起こりやすい5つの口内トラブル
- 口内トラブルを予防する3つのコツ
- 妊娠中の歯科レントゲンに関するよくある質問
レントゲンを撮ることで、虫歯や歯周病の早期発見や治療ができ、口内環境の改善につながります。
ぜひ、参考にしてくださいね。
妊娠中でも歯科レントゲンが撮影できる理由
胎児に影響が出るといわれている放射線量は約100mSvです。
一方、歯科レントゲンは一回につき0.01〜0.03mSvと、影響が出る値をはるかに下回っています。
また、レントゲン撮影時には、防護用エプロンを使いお腹や胸部を保護するので、胎児への影響をさらに抑えられます。
ただし、妊娠初期はつわりでお口の中に物が入ると、気持ち悪くなる可能性もあるため、どうしても必要な場合に限り、レントゲン撮影を行います。
体調が安定しやすい妊娠5〜7ヶ月であれば、母体・胎児とも負担が少なく安心して撮影できるでしょう。
妊娠中に安心して歯科レントゲンを撮影する3つのポイント
妊娠中でも安心して歯科レントゲンを受けるためのポイントを紹介します。
- 食後すぐの受診は避ける
- 妊娠していることを事前に伝える
- 不安な場合は歯科医に相談する
歯医者で治療を受ける前に参考にしてくださいね。
1.食後すぐの受診は避ける
妊娠中は気持ち悪くなりやすいため、食事した直後に受診するのは避けましょう。
妊娠中は子宮が胃腸を押し上げ、さらにホルモンの影響で消化器官の働きが鈍くなります。
満腹で歯科を受診すると、体に負担がかかり、吐き気や胃もたれが起こりやすくなるので注意が必要です。
受診は食後1~2時間あけるか、軽食にとどめたうえで診療を受けましょう。
つわりが強いときは遠慮せず歯科医院に連絡し、日程を変更してくださいね。
2.妊娠していることを事前に伝える
妊娠中に歯科を受診するときは、予約時に「妊娠○週です」と伝え、母子手帳を持参しましょう。
母子手帳を見せると、歯科医は胎児の週数や既往歴を把握し、安全性を最優先した治療計画を立てられます。
薬が必要になった場合も、胎児への影響が少ない薬剤や投与量を選択してくれるので安心です。
あらかじめ伝えておけば、診療中に体調が変わった際も対応してもらえます。
お母さん自身もリラックスして治療を受けられますよ。
3.不安なことは歯科医に相談する
歯科レントゲンの放射線量はごく微量で、胎児への影響はほぼ心配いりません。
それでも不安が残る場合は、撮影の延期や防護エプロンを二重にするなど、患者さんの意向に合わせた選択肢を歯科医が提示してくれます。
「こんな質問をしていいのかな…」と思う必要はありません。
赤ちゃんを守るための相談は大歓迎です。迷ったときは遠慮なく伝え、納得してから治療を進めましょう。
歯科レントゲン撮影でわかる3つのこと
レントゲン撮影をすると、以下の確認ができます。
- 虫歯の進行状態
- 歯周病の進行状態
- 根管治療の必要性
レントゲンを受けるか迷ったときに、参考にしてみてください。
1.虫歯の進行状態
レントゲンを撮ると、歯と歯の間や歯の内部に潜む虫歯まで確認できます。
このような虫歯は目視だと発見が難しいため、画像診断が欠かせません。
妊娠初期や後期は母体の負担が大きく、治療を受けられない可能性があるため、早期発見や治療を心がけることが大切です。
虫歯を小さいうちに見つければ、歯の損傷が大きくなる前に抑えられ、口内環境の改善につながりますよ!
2.歯周病の進行状態
歯周病は進行度合いによって治療方法が異なるため、レントゲン検査で確認が必要です。
歯周病は細菌により歯の周りの組織が破壊される病気で、歯がグラグラしたり、歯ぐきから出血したりするなどの症状が出ます。
進行すると歯を支える骨が減少していきますが、レントゲン検査で骨の減り具合が確認できます。
放置すると、歯から膿が出たり噛めなくなったりするため、違和感があれば歯医者に行きましょう。
3.根管治療の必要性
根管治療とは、虫歯菌が歯の神経まで達し、根の内部が感染したときに行う処置です。
虫歯が進行すると感染が根管にも広がり、歯を支える骨に炎症が起こることがあります。
まずはレントゲンで根の先端に黒い影がないかを確認し、状況に応じて以下の治療を行います。
根管内の細菌を放置すると炎症が慢性化し、最終的には抜歯が必要になることもあります。
噛んだときの違和感や持続的な痛みを覚えたら注意が必要です。
【時期別】妊娠中に歯科治療で行うこと
妊娠の時期によって、歯医者で行う治療は異なります。
- 妊娠1〜4ヶ月:応急処置や基本ケアが中心
- 妊娠5〜7ヶ月:レントゲンや通常の虫歯治療
- 妊娠8ヶ月以降:応急処置にとどめ、出産後に治療する
時期に合わせて、受診するようにしてくださいね。
妊娠1〜4ヶ月:応急処置や基本ケアが中心
胎児の器官形成が行われる妊娠初期は、つわりで母体の負担も大きくなりがちです。
レントゲン撮影は可能ですが、診断上どうしても必要な場合に限り、防護エプロンを着用して最小限の枚数で行います。
クリーニング、ブラッシング指導などの基本ケアは行えるため、つわりで歯磨きが難しい方にもおすすめです。
吐き気が出やすい場合は、ヘッドの小さい歯ブラシや洗口液を用いて、無理なくセルフケアを続けましょう。
妊娠5〜7ヶ月:レントゲンや通常の虫歯治療
この時期は母体の体調が安定し、胎児も放射線や薬剤の影響を受けにくい時期とされています。
防護エプロンを着用してのレントゲン撮影や、虫歯を削る処置などの一般的な治療が可能です。
歯に違和感がある場合は、お腹が大きくなり治療を受けるのが困難になる前に済ませておきましょう。
歯科治療を受ける前には、かかりつけの産婦人科医にも伝えておくと安心ですよ!
妊娠8ヶ月以降:応急処置にとどめ、出産後に治療する
妊娠8ヶ月以降は、子宮がさらに大きくなります。
長時間仰向けになると血圧が低下したり、治療の刺激による子宮収縮が起こったりする可能性があります。
そのため歯科では痛みや腫れを和らげる洗浄・仮封といった応急処置にとどめ、大がかりな処置は延期するのが一般的です。
歯に強い痛みが出たら、胎児への影響が少ないアセトアミノフェンで鎮痛する場合もあります。
急に痛みが出たら我慢せずご連絡ください。適切な方法で対処いたします。
妊娠中に起こりやすい5つの口内トラブル
妊娠中はホルモンバランスの変化やつわりで十分なケアができないことが原因で、次のような口内トラブルが起こりやすいです。
- 歯周病
- 虫歯
- 妊娠性歯痛
- 妊娠性歯肉炎
- 妊娠性エプーリス
唾液の質や量が変わり、口の中の細菌を洗い流す自浄作用が低下するため、虫歯や歯周病になりやすい傾向があります。
女性ホルモンや血液量の増加により、妊娠性歯痛や妊娠性歯肉炎、妊娠性エプーリスにかかるケースもあります。
このように、妊娠中は口内環境が悪化しやすいため、普段より丁寧にケアすることが大切です。
妊娠中に起こりやすい口内トラブルについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

妊娠中は歯医者に行くべき?胎児への3つの影響や安全な治療時期を徹底解説
妊娠中の歯医者は、週数や治療の内容によって受けられるかが決まります。とくに妊娠初期や後期は、赤ちゃんや母体への影響を考慮し、なるべく治療は避けた方が無難です。この記事では、妊娠中に起こりやすい口内トラブルや赤ちゃんへの影響などを詳しく解説します。妊娠中でも安心して治療を受けたい方はぜひご覧ください。
妊娠中の口内トラブルを予防する3つのコツ
妊娠中は口内トラブルが起こりやすいので、日頃のケアが大切です。
- いつもより丁寧に歯を磨く
- 歯の違和感を放置しない
- 定期検診を受ける
予防するためのコツを知り、口内トラブルを防ぎましょう。
歯の痛みや違和感は放置せず、早めに歯科医に相談することが大切です!
1.いつもより丁寧に歯を磨く
妊娠中はホルモンの変化で唾液が酸性になり、虫歯や歯周病が進みやすくなります。
食後は必ず歯磨きを行い、できるならデンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯ぐきの境目まで清掃しましょう。
つわりで一度に磨けない日は、体調の良い時間帯に歯磨きするのがおすすめです。
間食が増えたときはキシリトールガムで唾液を促し、こまめな水分補給でお口をリセットするのも効果的。
丁寧なケアを習慣にすると、妊娠後期や産後の負担は軽減するはずです。
2.歯の違和感を放置しない
歯の違和感や痛みがある場合は、早めに歯医者に行く必要があります。
歯周病になると早産や低体重児出産のリスクが上がるとされており、胎児の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
歯周病が進行するとプロスタグランジンというホルモンが増え、子宮の収縮を引き起こし、早産につながります。
そのため、胎児の健康を守るためには、日頃のケアで歯周病を予防することが重要です。
3.定期検診を受ける
妊娠中に起こる口内トラブルを予防するため、体調が安定する妊娠5~7ヶ月ごろに定期検診を受けましょう。
つわりによる体調不良が原因で歯磨きができなかった時期に蓄積した、プラークや着色をリセットできます。
虫歯や歯周病の有無もチェックしてもらい、必要であれば早めに治療を受けることが大切です。
ブラッシングやフロスの使い方など疑問があれば、歯科衛生士へ相談し、毎日のセルフケアに役立ててください。
妊娠中の歯科レントゲンに関するよくある質問
レントゲンを受けてもお腹の赤ちゃんは本当に大丈夫なの?
歯科レントゲンに関するよくある質問について解説します。
不安な場合は、受診前に歯科医に相談するようにしてくださいね!
Q1.妊娠初期に歯科レントゲンを受けてしまったけど、胎児に影響はありますか?
妊娠初期に歯医者でレントゲンを受けても、胎児に問題はないといわれています。
たとえば、この時期に放射線量が100mGyのレントゲンを受けた場合、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。
しかし、歯科レントゲンの放射線量は0.03mSvほどと非常に少ないため、母体や胎児に影響を与える心配はありません。
また、撮影の際は防護エプロンをつけるので、赤ちゃんへの影響を最小限にできます。
そのため、妊娠初期にレントゲン撮影をしても心配する必要はないでしょう。
Q2.妊婦は歯医者でレントゲンを拒否されることがあるの?
妊娠中でも基本的に歯科治療を受けられるため、拒否されることはほとんどありません。
事前に妊娠していることを歯科医に伝えれば、体調に考慮しながら検査を進めてくれます。
ただし、妊婦の体調や虫歯の状況によっては、レントゲン撮影をしない場合もあります。
Q3.妊婦が歯科レントゲンをすると赤ちゃんが奇形になる可能性はあるの?
妊娠中に歯科レントゲンを受けても、赤ちゃんが奇形になる可能性は極めて低いです。
受精後11日〜妊娠10週は、50mSv未満の被曝では奇形児になるリスクは上がらないといわれています。
さらに、妊娠10週を超えると赤ちゃんの器官形成が完了するので、奇形になることはほとんどありません。
万が一、妊娠26週までに100mSv以上の放射線を浴びてしまうと、中枢神経障害を起こすことがあると考えられています。
しかし、歯科レントゲンの放射線量は0.03mSvほどです。
歯科治療で胎児に影響を与えるほどの放射線を浴びることはないため、レントゲンが原因で奇形になることはないとされています。
Q4.妊娠中に子どものレントゲン撮影に付き添っても問題ない?
妊婦が子どもの付き添いでレントゲン室に入っても、胎児に影響が出る心配はありません。
検査に使われる放射線量は非常に少量で、体に影響を与える心配はないからです。
また、妊娠していることを事前に伝えておけば、防護エプロンで腹部を保護してくれます。
レントゲン室は狭くて子どもは不安になる場所です。お母さんが付き添ってあげると安心するでしょう。
【まとめ】レントゲン検査を受けて口内トラブルを早期発見しよう
レントゲンの放射線量は非常に少なく、胎児への影響はほとんどないため、妊娠中に受けても問題ありません。
撮影の際は、防護用エプロンを使ってお腹や胸部を保護するので、胎児への影響を最小限に抑えられます。
レントゲン検査は胎児が影響を受けやすい妊娠6~12週までは必要最低限にとどめ、そのあとの安定期に治療を開始すると安心です。
妊娠中は口内トラブルが起こりやすく、放置すると胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。
歯に違和感や痛みがあれば放置せず、早めに歯医者に行くようにしてくださいね。
コメント