パンデミックの歴史

コロナウイルス
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こんにちは、香里園にある坂井歯科医院です。

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっているなか、日本でも4月7日に緊急事態宣言が出されてから3週間以上が過ぎようとしています。

私たちが住む大阪では感染者の数は少しずつ減少しているものの、リハビリ病院で患者さんや医療従事者が多数感染しており、クラスターという感染者集団が発生してしまいました。

ここ最近はテレビを付ければ新型コロナウイルスのニュースばかりで、今までには聞いたことのないような言葉をよく耳にするようになり、その中のひとつが「パンデミック」です。

「パンデミック」とは感染症の世界的大流行を表す言葉であり、感染症の規模の大きさに応じて、エンデミック、エピデミック、パンデミックに分類され、その中でも最も規模が大きいものがパンデミックと呼ばれています。

世界各地で感染が拡大している新型コロナウイルスについて、世界保健機関が新型コロナウイルスはパンデミックになっていると発表し、過去のコロナウイルスの流行をパンデミックと発表したことはなく、今回の新型コロナウイルスが初めてのことです。

感染症によるパンデミックは古代より見られ、今までも大きな被害をもたらしてきたのですが、14世紀にはペストと呼ばれる細菌感染症がヨーロッパで大流行し、ヨーロッパの総人口の3分の1にあたる人が亡くなっています。

病原菌はペスト菌という細菌で菌を保有するネズミなどのげっ歯類からノミを介してヒトに感染し、その中でもネズミの種類であるクマネズミがペスト菌を媒介しやすかったため最も恐れられていました。

ヒトに感染したペスト菌が肺に入り込み肺炎を発症し、咳をすることで菌が大量に入った痰やツバの飛沫が飛び散り、ヒトからヒトへの感染も確認されています。

ペスト菌がヒトに感染すると高熱や頭痛が出たり、精神的錯乱が起きたりして、最終的にはペスト菌が血液に与える影響で黒い斑点が身体に出て死んでしまうことから別名黒死病と呼ばれています。

ペストの治療は抗生物質の治療が有効であり、早期に治療を行えば昔のような怖い病気ではなく予後も良好ですが、未だにワクチンはなく、今でも年間2000人の患者さんがいます。

現代の私たちが住む日本では水道をひねれば綺麗な水が出てくるのが当たり前ですが、その水が原因でパンデミックが起こったのがコレラと言われる感染病です。

病原菌はビブリオ・コレラと言われる細菌で感染経路はヒトの便で汚染された水や食物で症状は急性な嘔吐と下痢を起こし、急速な脱水症状が進み血行障害、血圧低下、頻脈、筋肉の痙攣、虚脱を起こし死に至るのです。

コレラが与えた影響は甚大であり、1800年代だけでもパンデミックが6回報告されていて、6回のパンデミックのうち、ようやく水が原因であることが分かったのが3回目のパンデミック時でした。

水が原因であることは分かったものの、根本的な原因は分からないままでしたが、4回目のパンデミック時にコレラ菌が原因であることがようやく判明し、人類は水を消毒するという行為に至りました。

コレラ感染症の直接の死亡原因になるのは大量の下痢と嘔吐による脱水症状であり、脱水症状時に失われる水と電解質を補給することが効果な治療方法とされています。

経口ワクチンを2回服用すると数ヶ月間効果があるのですが、効果が短期間のためワクチンはまだ開発途中であり、もっと効果が高く良いワクチンを作ることが現在でも望まれています。

現在でもなお、アジア、中近東、中南米では年間140〜430万人がコレラ菌に感染しており、年間28000〜42000人の方が亡くなっていて、2013年には7回目のパンデミックが報告されています。

パンデミックに発展する恐れのある疾患がいくつかありますが、その中に黄熱病と言われる感染病があり、みなさまも聞いたことがある感染病の名前ではないでしょうか。

病原体は黄熱ウイルスと言われるウイルスで、感染経路は蚊であり、蚊がウイルスを媒介しアフリカ中南米の猿と蚊の間で感染サイクルが存在していて、そのサイクルにヒトが入る込むことでヒトに感染が拡大していきました。

症状は発熱や頭痛、背部痛、嘔吐などがあり発症後3、4日で症状が軽快し回復することもありますが、重症化すると腎障害や出血、黄疸などが見られ、黄熱病の死亡率は30〜50%とされていて野口英世も黄熱病で亡くなっています。

黄熱病への対策として蚊を駆除することと1930年にはワクチンが開発されていて罹患前であれば予防接種を受けることができますが、特効薬はなく感染してしまったら症状によっての対処療法を行うことしかできず、現在でも熱帯アフリカや南米などの環境の悪い場所では流行していて、年間20万人の感染者がいて、年間3万人の人が亡くなっています。

人類は様々なウイルスや細菌と戦ってきましたが、未だに特効薬やワクチンがないものも多く現代でも同じウイルスや細菌と戦っているのが現状ですが、今までで一度だけ感染症の根絶が成功したことがあります。

天然痘と言われる感染症は病原体が天然痘ウイルスで口や鼻から入り込み、リンパ節を通って血液に入り、血液から全身の臓器に感染する恐ろしい感染病で根絶するまでには人類の3分の1が亡くなったと言われています。

飛沫感染や接触感染により感染し、初期症状は40℃前後の高熱や頭痛、腰痛などですが、発熱後3、4日目に一旦解熱して以降、頭部や顔を中心に皮膚と似た色の豆状の特徴的発疹が全身に広がっていきます。

発熱後7〜9日目には発疹が化膿して膿疱になることから再び高熱になり、天然痘ウイルスによる病変が呼吸器や消化器などの内臓にも現れ、呼吸困難などを併発し、重篤な呼吸不全により最悪の場合は死に至ります。

天然痘ウイルスの感染力は非常に強く、発疹の後のかさぶたが落下したものでさえ1年以上の感染させる力を持続させると言われており、これまでたくさんの人類が亡くなっています。

感染力が非常に強い天然痘ウイルスですが、感染した場合肉眼で判別が可能な症状が現れるため特定しやすいこと、感染はヒトのみに限られていたこと、優れたワクチンが開発され存在したことで根絶が可能になったのです。

1977年のソマリア人男性を最後に天然痘の感染は報告されておらず、1980年5月8日に世界保健機関は天然痘根絶宣言を発表し、現在でも天然痘ウイルスは存在しないとされています。

私たちは現在、新型コロナウイルスという未だ分かっていないことが多く、感染力が強いウイルスと戦っていて、今日に至るまでもたくさんの方がお亡くなりになっています。

1日でも早くみなさんが安心して生活ができるように、また笑顔で会える日がくるように、私たちが今できることは「STAY HOME」をして感染しない、感染させないことではないでしょうか。

危険に脅かされながらも私たちの生活を支えるために働いてくださっているお医者さん、看護師さん、医療従事者の方々、危機対応にあたる公務員さん、配達を担う物流事業者さん、スーパーやドラッグストアなどの販売員さん、バスや電車などの公共交通の職員さん、他にもまだまだたくさんいらっしゃると思います。本当にありがとうございます。

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