【医師監修】妊娠中の麻酔は危険?安全である根拠と3つの治療法を解説

【医師監修】妊娠中の麻酔は危険?安全である根拠と3つの治療法を解説 歯科に関連する話題
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妊娠中に歯医者で麻酔を使っても大丈夫?

赤ちゃんに影響はない?

我慢できるなら麻酔は避けたほうがいい?

妊娠中に歯の治療が必要になったとき、麻酔の使用に不安を感じる方も多いでしょう。

妊娠中は体調やホルモンの変化が大きく、薬の使用に慎重にならなければいけない時期です。

ただ、歯のトラブルを放置すると、母体や胎児に影響する場合があります。

本記事では、以下の点を解説します。

・妊娠中の麻酔が危険と言われる5つの理由
・妊娠中の麻酔が安全な医学的根拠
・妊娠中でもやっておくべき麻酔治療

妊娠中の歯科治療には不安がつきものですが、正しい知識を得ると安心して通院できますよ。

妊娠中の麻酔が「危険」と言われる5つの理由

妊娠中は、歯の治療を控えた方がいいと思う方も少なくありません。

1.胎児に影響があるといわれているから
2.流産や早産につながるといわれているから
3.母体に過度なストレスを与える可能性があるから
4.麻酔が妊娠中の体調変化に影響すると誤解されやすいから
5.古い情報や噂が今も広まっているから

ここでは、妊娠中の麻酔が危険といわれる5つの理由を見ていきましょう。

1.胎児に影響があるといわれているから

麻酔は体に入れる薬剤なので、「胎盤を通じて胎児に影響するのでは」と心配する方もいます。

確かに、局所麻酔薬のリドカインは胎盤を通過しますが、その量はごくわずかのため、胎児への影響は問題ないとされています。

一方で、痛みを我慢して治療を避けると炎症や感染が悪化し、母体や胎児に負担をかける場合があるので注意が必要です。

使用する薬の種類や量を歯科医と相談し、必要な治療を受けることが大切です。

2.流産や早産につながるといわれているから

歯科で使用する麻酔は少量であり、麻酔自体が流産や早産につながるわけではありません。

一方で、中等度~重度の歯周病は、歯ぐきで生じた炎症物質が血流を通じて全身に広がり、子宮の収縮を促すと報告されています。

そのため、歯周病の悪化は、早産や低体重児出産のリスクを高める要因のひとつと言われています。

麻酔の心配よりも、トラブルを放置しないで口内を清潔に維持し、出産時のリスクを減らしましょう。

(参照:アメリカ国立衛生研究所

3.母体に過度なストレスを与える可能性があるから

母体に過度なストレスを与える可能性があるから

麻酔を使うことに不安を感じる妊婦さんは少なくありません。

しかし、痛みを我慢したまま治療を受けるほうが、母体に負担がかかります。

痛みが続くと交感神経が刺激され、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されます。

これらは血圧の上昇や子宮の収縮を引き起こし、胎児への血流が減少する恐れがあるため、無理に痛みに耐えるのは避けましょう。

妊娠後期は体への負担が大きいため、ストレスをかけないように治療を進めるのが望ましいです。

4.麻酔が妊娠中の体調変化に影響すると誤解されやすいから

妊娠中はホルモンの影響で体調が変化しやすく、つわりや血圧の変動、めまいなどが起こりやすい時期です。

そのため、「麻酔をすると体調が悪くなるのでは」と不安に感じる方もいます。

しかし、歯科の麻酔は注射部位のみに作用する局所麻酔であり、全身への影響はごくわずかです。

まれに、緊張や空腹で血圧が下がり、気分が悪くなるケースがありますが、これは麻酔の影響ではなく、体調によるもののケースが多いです。

治療前に体調を歯科医に伝え無理のない姿勢や短時間での処置をお願いしましょう。

当日は空腹や脱水を避け、軽く食事と水分をとってから受診すると、体調不良の予防につながります。

5. 古い情報や噂が今も広まっているから

「妊娠中は歯の治療をしてはいけない」「麻酔は赤ちゃんに悪い」と聞いたことがある方も多いでしょう。

しかし、これらの多くは過去の医療事情や誤解に基づくもので、現在の医療水準では当てはまらないケースがほとんどです。

以前は麻酔薬の種類が限られており、安全性のデータも十分ではなかったため、妊娠中は薬を避けるべきとされていました。

インターネットや口コミの中にも、古い情報がそのまま残っていることがあります。

しかし近年は、「歯科用の局所麻酔薬を通常量で使用すれば、妊婦に問題はない」と報告されています。

医療は日々進歩しているため、過去の経験談より、最新の医学的根拠に基づいた判断が大切です。

不安がある場合は、遠慮せずに歯科医師に相談しましょう。

(出典:日本歯科麻酔学会誌 Vol.42 No.2 2023 「妊産婦および授乳期における歯科治療と薬物療法」

 

妊娠中に歯科治療について、より詳しく知りたい方は、「妊娠中に歯医者に行くべき3つの理由|治療の安全性と週数別の目安を解説」の記事もご覧ください。

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【医師監修】妊娠中の歯科用麻酔が「安全」である医学的根拠を解説

【医師監修】妊娠中の歯科用麻酔が「安全」である医学的根拠を解説

妊娠中の麻酔について、使用する時期や麻酔の種類、安全とされる医学的根拠を知っておくと安心です。

ここでは、妊娠中に麻酔を使用する際のポイントを見ていきましょう。

妊娠中に治療しやすい時期

歯科の治療が適しているのは、妊娠中期(13週〜27週)です。

この時期は胎児の器官形成が終わり、母体の体調も安定しやすい時期のため、局所麻酔も通常通り使用されるケースが多いです。

使用される麻酔薬

歯科で一般的に使われる局所麻酔薬は、次の2種類です。

  • リドカイン:国内外の歯科医院で広く使用されている代表的な麻酔薬
  • シタネスト(フェリプレシン含有麻酔薬):血圧が上がりやすい方に使用される場合がある麻酔薬

アメリカ歯科医師会でも、エピネフリン(アドレナリン)を含む局所麻酔薬(リドカインなど)は妊娠中でも使用可能としています。

リドカインとシタネストは、 アメリカ食品医薬品局(FDA)で妊娠中でも安全性が高い薬と評価された麻酔薬です。

妊娠中期であれば、歯科医師の管理下で使用されるケースが多く、これまで重大な影響が報告された事例はほとんどありません。

ただし、体調や経過によって注意が必要な場合もあるため、治療前に必ず不安な点は相談するようにしましょう。

参考:アメリカ歯科医師会PMC(PubMed Central)

妊娠中でもやっておくべき麻酔が必要な3つの治療

妊娠中でもやっておくべき麻酔が必要な治療

妊娠中でも麻酔を使うべき治療は、以下の3点です。

1.虫歯治療(軽度~中程度)
2.歯周病治療
3.親知らずの抜歯(炎症がある場合)

出産後は通院の時間を確保しにくくなるので、妊娠中に必要な治療を済ませておきましょう。

1.虫歯治療(軽度~中程度)

軽度の虫歯であれば経過観察になりますが、中程度以上になると神経に炎症が広がり、強い痛みや腫れが現れます。

こうした症状をそのままにすると、治療が長引いたり、強い薬が必要になったりする場合があります。

また、歯の痛みは睡眠不足やストレスにもつながるので注意が必要です。

妊娠中は免疫力が低下しやすく、通常よりも感染症が重症化しやすい傾向にあるため、安定期に処置しておけば、症状が悪化するリスクを抑えられます。

虫歯が重度で神経まで進行している場合は、体調面を考慮しつつ、歯科医と相談しながら治療を進めていきましょう。

妊娠中に起こりやすい口内トラブルを知りたい方は、「妊娠中に歯が痛くなる5つの原因!起こりやすい歯のトラブルや治療前の対処法も紹介」の記事もご覧ください。

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2.歯周病治療

歯周病治療

妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすく、歯周病が悪化しやすい時期です。

特に妊娠性歯肉炎にかかりやすく、発症すると次のような症状が現れます。

  • 歯磨きのときに出血する
  • 歯茎が赤く腫れて傷む

炎症が進むと、歯ぐきで生じた炎症物質が血流を通じて全身に広がり、子宮の収縮を促すと考えられています。

その結果、出産のトラブルにつながるリスクが高まるという報告があるので、歯周病をそのままにするのは避けましょう。

妊娠中でも、歯科医院でお口の中の状態をチェックしてもらい、必要に応じてクリーニングを受けることが大切です。

3.親知らずの抜歯(炎症がある場合)

親知らずの周囲で腫れや化膿を繰り返すと、抗菌薬や鎮痛薬を長期的に使う必要があり、体へ負担がかかります。

症状がなければ、抜歯は出産後に行うことも可能です。

ただし、炎症が強い場合や痛みが続くときは、早めに治療しておいたほうが安心です。

出産後は授乳や育児で通院の時間を確保しにくくなるため、体調が安定している時期に処置を済ませておいてくださいね。

妊娠中の麻酔に関するよくある質問

妊娠中の麻酔に関するよくある質問

Q1.麻酔をすると胎児に影響があるの?

歯科で使用される局所麻酔薬(リドカインなど)は、国際的に妊婦への使用が認められている薬剤です。

体内で速やかに代謝され、胎盤を通過する量もごくわずかとされています。

麻酔の危険性より、痛みを我慢して治療を遅らせる方が低体重児出産や早産などのリスクにつながる可能性があります。

不安がある場合は、使用する薬剤名や投与量を事前に歯科医師に確認し、納得したうえで治療を受けましょう。

Q2.麻酔を使う際に医師に確認すべきことは?

麻酔を使う際に医師に確認すべきことは?

過去に薬で体調を崩した経験がないかを必ず伝えましょう。

麻酔薬の種類や量は、妊娠週数や体調に合わせて調整できます。

そのためにも、事前に情報を共有しておくことが大切です。

妊婦健診の際に歯の痛みや違和感を感じたら、まず産婦人科医に相談しておきましょう。

歯科治療の影響やリスク、治療に適した時期などを確認しておくと安心です。

また、歯科医院を受診するときは、妊娠中であることに加え、これまで薬や麻酔で気分が悪くなったり、湿疹が出たりしたことがある場合は伝えてください。

Q3. 麻酔で気分が悪くなったときはどうすればいい?

妊娠中はホルモンの影響で血圧が変動しやすく、まれに麻酔の最中や治療中に気分が悪くなることがあります。

息苦しさや動悸、めまい、冷や汗などが現れたら、我慢せずすぐに歯科医師へ伝えてください。

そのままの姿勢で無理をすると、血圧がさらに下がり、母体にも胎児にも負担がかかる可能性があります。

体の左側を下にした姿勢(左側臥位)に変えると、圧迫がやわらいで血流が改善し、症状が軽くなるケースがありますよ。

【まとめ】妊娠中の麻酔を使った治療は、歯科医と相談しながら進めよう!

【まとめ】妊娠中の麻酔を使った治療は、歯科医と相談しながら進めよう!

妊娠中に麻酔を使った歯科治療は、避けるものではなく、母体と胎児を守るために大切なケアです。

正しい知識と歯科医の管理のもとで麻酔を使用すれば、安心して治療を受けられます。

不安を抱え込まず、体調や妊娠週数に合わせて、早めに相談しておきましょう。

出産前からケアを受けておくと、出産後の忙しい時期に歯のトラブルに悩む必要はなくなりますよ。

坂井歯科では、妊娠中の歯科治療や定期検診にも対応しています。

安心して出産を迎えられるよう、いつでもお気軽にご相談ください。

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