
妊娠中に歯医者で麻酔を使った治療をしても大丈夫?

麻酔は赤ちゃんに影響ないの?

赤ちゃんのためにも、治療は我慢した方がいい?
歯医者での治療を考えてる妊婦さんにとって、麻酔を使うのは不安を感じますよね。
妊娠中でも、麻酔の種類や治療のタイミングを慎重に選ぶことで、母体や胎児へのリスクを抑えた治療が可能です。
ただし、個人の体調や妊娠経過によって異なるため、医師に相談したうえで判断することが大切です。
本記事では、妊娠中でも麻酔治療を受けるべき理由や、治療を受ける際のポイントなどを詳しく解説。
不安を減らし、安心して麻酔を使った治療が受けられるヒントをまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
妊娠中でも時期によっては麻酔を使った治療が受けられる
歯科で一般的に用いられる局所麻酔薬(リドカインなど)は、安全とされています。
必要最小限の量であれば、胎盤を通過しても赤ちゃんへの影響がごくわずかとされているためです。
さらに全身ではなく治療部位だけを麻酔するため、母体への負担も比較的小さく抑えられます。
歯科医院によって表面麻酔を使用し、注射時の痛みを軽減する工夫を行っています。

妊娠中でもやっておくべき麻酔が必要な治療
妊娠中でも以下の治療であれば、受けられる場合があります。
2.歯周病治療
3.親知らずの抜歯(炎症がある場合)

体調が安定している妊娠中期(16週〜27週頃)までに、治療を済ませておきましょう。
1.虫歯治療(軽度~中程度)
軽度から中程度の虫歯は、妊娠中でも麻酔を使って治療しやすいケースです。
小さな虫歯は進行が早く、放置すると治療の範囲が広がる恐れがあります。
痛みが出てからだと処置が大がかりになるので、違和感を覚えたら早めに相談しましょう。
虫歯が小さいうちに治療を済ませ、産後は育児に集中できる環境を整えることが大切です。
2.歯周病治療
歯周病のケアも妊娠中にしておきたい治療のひとつです。
歯周病は進行すると、早産や低体重児のリスクを高めるとされています。
妊娠中はホルモンの影響で歯茎が腫れやすくなり、歯石や歯垢が溜まりやすい状態です。
専用の器具を使ったクリーニング、必要に応じて麻酔を伴う処置をすることで炎症を抑えられる可能性があります。

妊娠中の体調管理の一環として、口腔内の健康を保つことは重要です。
3.親知らずの抜歯(炎症がある場合)
親知らずのまわりが腫れて痛むような場合は、妊娠中でも処置が必要になることがあります。
妊娠中は歯ぐきが敏感になりやすく、親知らずのまわりに炎症(智歯周囲炎)が起こりやすくなります。
症状がひどいときは、抜歯を検討することもありますが、必ず歯科医と産婦人科医、両方に相談してから判断しましょう。
無理に痛みを我慢すると、食事がとれなくなったり、強いストレスがかかって母体にも胎児にもよくありません。

歯ぐきの腫れや違和感、膿がたまるなどの症状が現れた場合は、早めに受診してください。
【放置NG】妊娠中でも麻酔治療を受けるべき5つの理由
妊娠中でも歯医者での治療を受けるべき理由は、以下の5つです。
- 歯周病が早産・低体重児のリスクを高めるため
- 虫歯や感染症が全身疾患を引き起こすため
- 痛みが強いと母体にストレスを与えるため
- 重症化すると治療の負担が大きくなるため
- 母乳育児にも悪影響を与えるため
我慢して悪化すると母体に負担をかけるので、必要な場合は麻酔治療を受けましょう。
1.歯周病が早産・低体重児のリスクを高めるため
歯周病が進行すると、歯ぐきで発生した炎症物質が血流を通じて全身に広がり、子宮の収縮を促すと考えられています。
また、妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすく、歯周病が悪化しやすい状態です。
その結果、早産や低体重児出産のリスクが高まるという報告があがっています。

軽い歯肉炎でも、妊娠中に行えるクリーニングや予防処置がありますよ。
参考元:日本臨床歯周病学会「歯周病と妊娠」
2.虫歯菌や歯周病菌が全身疾患を招くため
虫歯や歯周病などが進行すると、細菌が血流に乗って全身にまわる恐れがあります。
とくに妊娠中は免疫力が低下しやすく、通常よりも感染症が重症化しやすい状態です。
麻酔を使った治療は不安かもしれませんが、医師と相談しながら安全な方法を選べば、赤ちゃんにも負担をかけずに治療ができますよ。

妊娠中こそ、口腔ケアを意識して体調管理に役立てたいですね。
3.痛みが強いと母体にストレスを与えるため
歯の痛みが強くなると、日常生活に支障をきたし、睡眠不足や精神的なストレスの原因になります。
ストレスホルモンが増えると血圧が上昇し、さらなるトラブルが起こりやすくなるともいわれています。
麻酔で治療すれば痛みは抑えられるため、心身の負担の軽減にも有効です。

母体が落ち着いた状態を維持することで、赤ちゃんの健やかな成長にもつながります。
4.重症化すると治療の負担が大きくなるため
歯の痛みを我慢して放置すると、症状が進行して抜歯や根管治療など大がかりな処置が必要になるケースがあります。
妊娠中は治療時にとる体勢がつらいことも多く、長時間の治療は母体に負担を与える要因です。
さらに、出産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、周りに頼れる人がいないと受診する時間がとれない可能性もあります。
5.母乳育児にも悪影響を与えるため
産後は頻繁に赤ちゃんのお世話をする必要があるため、体力的にも精神的にも疲れやすい状態です。
もし歯の痛みや腫れが続いていると、授乳や抱っこに集中できずストレスが増大する可能性があります。
妊娠中期の安定した時期に可能な範囲で治療を終えておけば、出産後の負担が減り赤ちゃんのお世話も楽になるでしょう。

歯科医に相談しながら母乳育児への影響も考慮した治療計画を立てると安心です。
妊娠中の歯科受診について、より詳しく知りたい方は、「妊娠中は歯医者に行くべき?胎児への3つの影響や安全な治療時期を徹底解説」の記事もご覧ください。

妊娠中でも安心して麻酔治療を受けるポイント8選
妊娠中の麻酔治療が不安な方は、以下の8つを行っておくと安心です。
- 治療前に産婦人科医と相談する
- 妊婦の受け入れ体制が整っている歯科医院を探す
- 麻酔を使う時期を医師と相談する
- 使用される麻酔薬の説明を受ける
- 過去のアレルギー歴・副反応歴を伝える
- 仰向け姿勢がつらい場合は事前に伝えておく
- 治療前に軽食をとっておく
- 麻酔使用後は少し休む時間をとる
この8点を知っておくだけで、妊娠中でも落ち着いて麻酔治療に臨めます。
1.治療前に産婦人科医と相談する
妊娠中に麻酔治療を受ける前には、必ず産婦人科医と相談しましょう。
母体や胎児への影響を考慮した治療時期や麻酔薬の選択を行うには、妊娠週数や持病の有無などの情報共有が欠かせません。
特に妊娠高血圧症候群などを指摘されている場合は、歯科と産婦人科が連携して方針を立てる必要があります。
妊娠の時期にかかわらず、歯科受診時には妊娠中である旨を伝え、産婦人科受診の際にも麻酔治療を予定していることを伝えましょう。

こうした事前の情報共有があれば、妊娠中でも歯科治療を受けやすくなりますよ。
2.妊婦の受け入れ体制が整っている歯科医院を探す
すべての歯科医院が妊婦さんの治療に慣れているわけではありません。
妊婦さんの治療経験が豊富な歯科医院では、麻酔の使い方や体勢への配慮など、安全面にしっかり対応してくれます。
治療に不安がある場合は、あらかじめ「妊婦の受け入れが可能か?」などを電話で確認しておくと安心です。

当院も、妊婦さんが受診しやすい体制を整えていますので、お気軽にご来院ください。
3.麻酔を使う時期を医師と相談する
麻酔を使った治療は、胎児の器官形成が完了し、安定してくる妊娠中期(妊娠5〜7ヶ月ごろ)が良いとされています。
もちろん、妊娠経過は一人ひとり異なるので、安定期でも母体や赤ちゃんの状態によっては、麻酔ができない場合もありえます。
また、妊娠初期と後期は、以下の理由から避けることが望ましいです。
- 妊娠初期:胎児の重要な器官が形成される時期
- 妊娠後期:お腹が大きくなり治療姿勢がつらくなる時期
虫歯の進行度や痛みの程度によっては、産後に治療を行う選択肢もあります。
歯科治療は、医師としっかり相談して計画することが大切です。

歯科医と綿密に話し合い、母体と胎児の状態に合わせた最適なタイミングで治療を受けてくださいね。
4.使用される麻酔薬の説明を受ける
妊娠中の麻酔治療には安全とされている種類が使用されますが、事前に効果や副作用の可能性を確認しましょう。
ネットの情報には誤解を招くものや極端な内容もあるため、直接話して疑問を解消するのがおすすめです。
また、歯科医から話を聞いてどうしても納得できない疑問点があるときは、セカンドオピニオンとして別の歯医者で相談することも考えてみましょう。
自分と赤ちゃんを守るためにも、医師を頼りながらも納得できる治療を受ける姿勢が大切です。
5.過去のアレルギー歴・副反応歴を伝える
麻酔薬や処方薬に対してアレルギーを起こしたことがある方は、必ず治療前に歯科医へ伝えてください。
アレルギーの有無だけでなく、過去に治療中に気分が悪くなった、めまいがあったといった体調の変化も重要な情報なので忘れずに。
妊娠中に使用する麻酔薬を選ぶ判断材料となるので、自分と赤ちゃんの安全のためにも、詳しく伝えるようにしましょう。

診察のとき思い出せないことに備えて、事前にメモにまとめておくと安心です。
6.仰向け姿勢がつらい場合は事前に伝えておく
妊娠後期には子宮が下大静脈を圧迫し、仰向けになることで血流が悪くなる「仰臥位低血圧症候群」のリスクがあります。
息苦しさや動悸、めまい、気分不良などを感じることがあるので、普段から仰向けが辛く感じている方は、治療前に伝えておきましょう。
また、治療中に気分が悪くなった場合も、無理をせずすぐに申し出ることが重要です。
ストレスなく治療を受けるためにも、取りやすい・取りにくい姿勢を遠慮なく相談してください。
7.治療前に軽食をとっておく
空腹や疲労が重なると、「疼痛性ショック(神経性ショック・デンタルショック)」を起こしやすくなります。
治療に対する不安や恐怖、緊張によって血圧が大きく変動し、めまいや吐き気、動悸、さらには意識を失ってしまうケースもあります。
特に妊娠中は自律神経が乱れやすく、こうした症状が出やすいため、空腹状態での治療は避けるのが望ましいです。
麻酔を使った処置のあとは、効果が切れるまで食事ができなくなるため、あらかじめ軽く食べておきましょう。

ただし、満腹の状態で治療を受けると、かえって気分が悪くなるので、消化に良く負担の少ない食べ物を選ぶのがポイントです。
ヨーグルトやおかゆ、バナナなどを取り入れ、体に優しい食事でコンディションを整えてから歯科医院へ向かいましょう。
8.麻酔使用後は少し休む時間をとる
麻酔治療の後は、緊張状態や血圧の変動によって、気分が悪くなる可能性があります。
特に妊娠中は体調の変化に敏感な時期なので、治療後はすぐに動き出さず、院内の椅子に座るなどして少し休憩をとってください。
また、治療後すぐに車を運転したり、長時間の移動をしたりするのは避けた方が安全です。
できるだけ家族に送迎をお願いするか、公共交通機関を利用しましょう。

少しでも異変を感じたら無理をせず、すぐに歯科医やスタッフに申し出てくださいね。
【まとめ】妊娠中の麻酔を使った治療は、歯科医と相談しながら進めよう!
妊娠中に歯のトラブルが起きても、赤ちゃんへの影響が心配で治療をためらう方は多いでしょう。
しかし、悪化することで母体にも赤ちゃんにも負担が生じるため、早めの対応が大切です。
妊娠中期であれば、局所麻酔を使った治療は可能といわれています。
不安がある場合は、かかりつけの歯科医院や産婦人科に相談しながら進めましょう。
坂井歯科では、妊娠中の方も安心して通院できる体制を整えておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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