
子どもの歯が黒くなる原因は?

痛がっていなければ、様子を見ていいの?

乳歯が黒いときは、歯医者に連れていくべき?
子どもの歯が黒くなっているのを発見すると、親としては不安な気持ちになりますよね。
黒い乳歯は、虫歯や着色、治療痕などが原因として考えられます。
見た目では判断が難しいものの、放置すると痛みが現れる場合もあるため、自宅でも観察が必要です。
この記事では、乳歯が黒くなる原因と対応策、虫歯だった場合の治療の流れまでを詳しく解説します。
黒い乳歯が見つかったときの対処法がわかれば、今とるべき行動が明確になりますよ。

乳歯に関する正しい知識を持って、子供の歯の健康を守っていきましょう。
乳歯が黒くなる4つの原因と治療法
乳歯が黒くなる原因とそれぞれの歯科治療は、以下の4つです。
- 進行した虫歯|虫歯の治療
- 着色汚れ|歯のクリーニング
- 神経が死んでしまった歯|歯根の治療
- サホライド治療による変色|経過観察・詰める
黒くなる理由を知ることが、正しい対応への第一歩になりますよ。
1.進行した虫歯|虫歯の治療
乳歯が黒く見えたら、虫歯の進行を疑いましょう。
虫歯菌が出す硫化水素が唾液や血液中の鉄と結びつき、黒い硫化鉄を作り、むき出しになった象牙質に入り込むことで黒く変色します。
さらに飲食物や細菌の色素が染みこんで黒く見える場合もあります。
子どもが冷たいものや甘いもので歯がしみたり、片側だけで噛んでいたりする場合、虫歯が原因かもしれません。

症状が軽くても、虫歯治療が必要です。早期なら削る量も少なくすみますよ。
2.着色汚れ|クリーニング・ブラッシング指導
食べ物や飲み物の色素が歯の表面に付着することで、乳歯が黒や茶色に見えることがあります。
これは着色汚れと呼ばれるもので、歯そのものが変色しているわけではありません。
ただ、さまざまな細菌がからみあって形成される「バイオフィルム」によって汚れが強く付着し、歯ブラシだけでは落としにくいのが特徴です。

また、口呼吸でお口の中が乾燥すると、さらに汚れが付きやすくなります。
歯の表面についた着色汚れは、歯科医院での専用器具を用いたクリーニング(PMTC)で落とせることがほとんどです。

歯科衛生士から正しい磨き方を学び、着色しにくい環境を作ることも大切です。
3.神経が死んでしまった歯|歯根の治療
強い衝撃や虫歯の悪化によって、歯の神経が壊死すると内部が変色し、黒ずんで見えます。
神経が死んで痛みを感じなくなると、気づかずに放置してしまう場合もあります。

転んだり、顔をぶつけたりした後、特定の歯に黒っぽい変化が見られないかよく観察しましょう。
神経が死んだ歯は、磨いても元の色に戻らないので、歯科医院での根の治療(根管治療)が必要です。
レントゲンで神経の状態を確認し、感染部分を丁寧に取り除いたうえで薬剤による洗浄・消毒を行います。

歯根の治療が終わったら、型を取り、被せ物をして完了です。
4.サホライドによる変色|経過観察・詰める
サホライドとは、虫歯の進行を抑えるために用いられる薬剤です。
銀イオンが含まれており、歯の成分と反応して黒色の「硫化銀」を形成し、歯が黒く変色します。
痛みを伴わずに虫歯の進行を抑られるため、乳歯の虫歯治療に使われます。

サホライドによる変色は歯に問題はありませんが、見た目が気になる場合は歯科医院で相談してください。

状況に応じて、歯と同じ色のレジン(歯科用プラスチック)で補修します。
黒い乳歯が虫歯だったときの治療の流れ
上記で解説した原因の中でも、虫歯や神経に影響が出ている場合は、早急に治療が必要です。
乳歯の虫歯治療の流れは、以下のとおりです。
- ステップ1.視診とレントゲンで状態を確認
- ステップ2.虫歯の進行度(C1〜C4)に合わせた処置
- ステップ3.永久歯への影響も視野に入れて経過観察
治療のステップを把握すれば受診の不安も減り、親子で安心して通院ができますよ。
ステップ1.視診とレントゲンで状態を確認
肉眼で歯の色や形、表面の状態などを確認します。
虫歯が進行して内部まで影響している可能性がある場合、レントゲン撮影でより詳しく検査します。
レントゲンでは、虫歯の深さや、神経・歯根の状態、周囲の歯や骨への影響も確認可能です。

撮影後は画像を一緒に見て、現在の状況や治療の方針を話し合います。
ステップ2.虫歯の進行度(C1〜C4)に合わせた処置
虫歯だと判明したら、以下のとおり進行度に応じた処置を行います。
C1:エナメル質の虫歯

正しいブラッシング方法を身につけ、これ以上悪化させないことが大切です。
C2:象牙質の虫歯
虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで進行している状態です。
冷たいものや甘いものがしみる、歯の表面に小さな穴があいていることがあります。
虫歯部分を除去して、レジン(歯科用プラスチック)などの詰め物で補います。

白い詰め物が使われるため、目立ちにくいのが特徴です。
C3:神経まで達した虫歯
虫歯が神経(歯髄)にまで進行し、歯ぐきの腫れや膿が出て炎症や感染が起きている状態です。
ズキズキとした強い痛みが出ることもあり、神経を取り除く必要があります。
その後、感染を防ぐために薬剤で内部を消毒し、被せ物で歯の形と機能を回復させます。
C4:歯の根だけ残った状態
歯を残すことが難しく、化膿や口臭の原因となるため、抜歯になるのが一般的です。
しかし、生えかわりの時期より早めに抜くと永久歯にも影響が及ぶ可能性もあるので、治療して残す場合もあります。
抜歯した場合、永久歯への影響を最小限に抑えるためのスペース確保や、必要に応じた処置(スペースメンテナーなど)を行います。

ここまで悪化するのを避けるためにも、初期段階で虫歯を発見することが必要です。
乳歯の虫歯に関して、より詳しく知りたい方は、「【放置はNG】乳歯の虫歯ができる4つの原因|簡単にできる予防法も解説!」の記事もご覧ください。

ステップ3.永久歯への影響も視野に入れて経過観察
治療後は「痛みが消えたら終わり」ではありません。
乳歯の根の先には、次に生えてくる永久歯があります。
永久歯が生えかわるまで、定期的に経過観察していくことが大切です。

治療後も3か月ごとに検診を受け、お口の中をチェックしてもらいましょう。
歯茎が腫れる・痛みが再発するといった異変に気づいたら、次の予約を待たずに受診してくださいね。
黒い乳歯を見つけたときに自分でするべきこと5選
黒い乳歯を発見したときは、以下の行動をとりましょう。
- 歯科医院で早めに診察を受ける
- 痛みがない場合も放置しない
- 写真で変化を記録する
- 口の中全体をチェックする
- 黒い部分を無理にこすったり削ったりしない
とるべき行動を押さえておけば、口内トラブルの早期発見につながりますよ。
1.歯科医院で早めに診察を受ける
黒くなった乳歯は、専門家の目で原因を特定することが必要です。
見た目だけでは「虫歯か着色汚れか」を判断しきれず、自己判断で放置すると重症化のおそれがあります。
初期なら削る処置を回避できるケースもあり、結果的に治療の負担を減らせるでしょう。

黒い変色に気づいたら、できるだけ早く歯科医院を受診することでお口の中の健康を維持できますよ。
2.痛みがない場合も放置しない
痛みは、乳歯のトラブルを判断する絶対的な指標ではありません。
乳歯は大人の歯より薄く、虫歯もあっという間に進むため、「痛くないから大丈夫」と思っているうちに根まで侵されるケースがあります。
痛みが出る頃には、深刻な状態になっていることも少なくありません。
また、子ども自身が歯の痛みを自覚していなかったり、体調の悪さを上手に伝えられないことも考えられます。

黒ずみを発見したら、痛みがないからと安心せず、見た目に変化がある段階で対応することが大切です。
3.変化を写真で記録する
黒ずみに気づいてもすぐに受診できない場合や、自宅で様子を見ておきたい場合は、スマートフォンで撮影しておくと後々役立ちます。
時系列で色や範囲の変化がわかるため、歯科医が「急激な進行か、緩やかな変化か」を判断しやすく、適切な処置につながりやすいためです。
撮影するときは、同じ角度・明るさ・距離で撮りましょう。

当日に受診できるなら、撮影は必須ではありません。
大型連休や混雑で予約が取れないときなどは、診察時の参考資料として写真を残しておくと安心です。
4.口の中全体をチェックする
黒くなった歯だけに注目するのではなく、口内全体の状態を一緒に確認してください。
虫歯や歯のトラブルは、一箇所だけでなく複数の場所で同時に進行する場合もあるからです。

見た目には異常がなくても、口臭や歯ぐきの腫れ、赤み、出血などのサインはありませんか?
毎日の歯磨きのときなどに、子どもの口の中を全体的に観察する習慣をつけましょう。
5.黒い部分を無理にこすったり削ったりしない
黒ずみを取ろうと強くこするのは避けましょう。
乳歯は大人の歯よりもデリケートで、硬いもので削ると本来守るべき部分まで失うリスクがあります。
変色を取りたい気持ちはわかりますが、自己判断では症状の悪化を招く可能性があります。

専門的なケアが必要な場合は、プロに任せてくださいね。
乳歯が黒くなるのを予防する5つの方法
乳歯が黒くなるのは、虫歯や着色などさまざまな要因が影響しています。
以下を意識して黒くなるのを防ぎましょう。
- 食習慣を見直す
- 毎日の仕上げ磨きを丁寧にする
- 普段から口を閉じることを意識させる
- 子供と一緒に歯への意識を高める
- 定期的な歯科検診の習慣をつける
小さな積み重ねでリスクを下げられるので、ぜひ親子で取り組んでみてくださいね。
1.食習慣を見直す
毎日の食生活を見直すことは、乳歯の健康を維持するうえで欠かせません。
糖分が多いおやつやジュースを頻繁にとると、虫歯菌のえさとなり、短期間でも一気に進行しやすくなります。
日々の生活で、以下を意識してみましょう。
- 食後には水やお茶:口内に残った食べかすや糖分を軽く洗い流してくれます。
- おやつの時間を決める:「ダラダラ食べ」は虫歯リスクを高めるので避けましょう。
- 寝る前の飲食はNG(水以外):必ず歯磨きをしてから寝かせることで、夜間に菌が繁殖するのを抑えられます。

ちょっとした心がけの積み重ねによって、乳歯が黒くなりにくい生活習慣を身につけられます。
2.毎日の仕上げ磨きを丁寧にする
子どもが自分で磨いたあとに仕上げ磨きをして、磨き残しがないかを確認してください。
奥歯の溝や歯と歯の間は汚れがたまりやすい部分なので、念入りに磨くようにしましょう。
歯ブラシは年齢に合ったサイズや毛の硬さで、小さな口でも奥まで届くようにヘッドの小さいものがおすすめです。
毎日の数分の仕上げ磨きによって、乳歯に起こるトラブル予防につながりますよ。
3.普段から口を閉じることを意識させる
口を閉じて鼻呼吸を意識すると、歯の表面は唾液で潤され、汚れや菌が洗い流されやすくなります。
アレルギーや風邪による鼻づまりがあっても、こまめな水分補給や加湿などでお口の中の乾燥を防ぎましょう。

「お口閉じようね」を合言葉に、日常生活で声かけを続ければ、子どもも鼻呼吸に意識が向くはずです。
口呼吸は歯並びにも影響を与えるため、早いうちから鼻呼吸の習慣を身につけておくことが必要です。
4.子供と一緒に歯への意識を高める
「歯は大切」と感じ始めると、自分から進んでケアしようとする気持ちが育ちます。
歯みがきを「親と一緒にがんばる時間」にすれば、お子様も前向きに取り組みやすくなります。
まずは一日一回、決まったタイミングで自分で磨く習慣をつけましょう。
絵本や歯みがきアプリを活用すれば、遊び感覚で歯の大切さを学べます。

日々の声かけやちょっとしたサポートによって、子どもの「歯を守ろう」とする意識が高まるきっかけになるかもしれません。
5.定期的な歯科検診の習慣をつける
歯の定期検診を行えば、黒ずみや虫歯の早期発見・早期治療が可能です。
定期検診は、治療の負担を軽くできるだけでなく、将来のトラブルも防ぎやすくなります。
歯科医院ではフッ素塗布など、予防のためのケアも受けられ、家庭では落としきれない歯垢や着色を除去してもらえます。
また、定期的に通うことでお子様自身が歯医者に慣れ、不安や恐怖を感じにくくなるのもメリットです。

いずれ抜ける歯だからといって放置せず、こまめに検診を受けることで、虫歯の悪化や歯並びへの影響を軽減できます。
【まとめ】乳歯が黒くなったら放置しない|まずは早めの受診から!
乳歯の黒ずみは、虫歯だけでなく着色や神経の変化など、さまざまな原因で起こります。
痛みが出にくいため気づきにくく、見過ごしてしまうケースも少なくありません。
放置すると、永久歯の生え方や歯並びに影響を与えることもあります。まずは、歯科医院で診てもらい、必要なケアや予防に取り組みましょう。
坂井歯科でも、虫歯や着色で黒くなった乳歯の治療を行っております。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
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