唾液の作用

坂井歯科医院の話題
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こんにちは、香里園にある坂井歯科院の今道です。

私は先日右手の人差し指の爪が割れてしまい、1本だけ爪が非常に短くなってしまい生活がしにくくなりました。

爪が短くなってしまったことでパソコンのキーボードが打ちにくい、テーブルの上に置いてある紙が取りづらいなど細かい作業がしにくいですが、幸いなことに爪はまた伸びてくるので元の生活に戻ることができます。

今まで当たり前にあったものがなくなってしまうと不便に感じるという経験は誰しもがあるかと思いますが、私は仕事で歯を失ってしまった患者さんの声を聞く機会が多く、歯を失ってしまった患者さんのほとんどが噛みにくくなった、食事が楽しくないなどとおっしゃいます。

おとなの歯は一度失ってしまうと二度と元には戻ることはなく、何らかの方法で治療しなければならないのですが、やはり自分の歯に勝るものはなく改めて歯を大切にしなければならないなと思います。

私たちの歯の健康を維持するためには毎日のハミガキや定期的なメインテナンスが欠かせないのですが、その他にも当たり前のように存在しているのでなかなか感謝されないけど影で私たちの健康を支えてくれていてなくなてはならないものが「唾液」です。

唾液は全身の影響を及ぼす

唾液は私たちの歯の健康を維持するために非常に大切な役割をしているのですが、唾液のパワーはお口の中だけに働くのではなく全身に作用するという素晴らしい力を持っているのです。

唾液といえば酸っぱいものを想像したり目の前にしたりするとお口の中にじわりと溢れてくるもので、ご自身で唾液を意識することはほとんどないかと思いますが今回は唾液の持つ健康効果をご紹介します。

唾液の正体をご存知でない方が多いかと思いますが実は唾液の正体は血液で、唾液は血液が唾液線という組織を通過する時に作られてお口の中に運ばれています。

抗菌・免疫への効果

唾液の成分の99%は水分なのですが、残りの1%に抗菌や免疫、消化に関わる重要な成分が含まれていて、その成分が様々な病気の予防や心身の健康に良い影響を与えることが研究の結果分かってきているのです。

唾液には抗菌物質が多く含まれていてその中でもIgAという抗体の一種がバイ菌やウイルスなどを発見するとすぐにくっついて粘膜に付着しないように働いてくれます。

身体の入り口はお口でありバイ菌やウイルスはお口から侵入することが多く、お口に入ったバイ菌やウイルスをIgAが撃退してくれるのですが、IgAが低下すると風邪をひきやすくなるなど病気にかかりやすくなってしまいます。

唾液の中のIgAは腸内の善玉菌や悪玉菌、日和見菌といった腸内細菌である腸内フローラのバランスを保つ働きがあり、腸内フローラのバランスが整えられていると身体の免疫力が高められ病気にかかりにくくなります。

脳の松果体と呼ばれる部分から分泌されるホルモンにメラトニンと呼ばれる物質があるのですが脳や身体を眠りに入るやすい状態にするホルモンでメラトニンは唾液線からも分泌されているのです。

メラトニンは夜になると分泌量が多くなり、メラトニンが作用することで体内時計に働きかけ覚醒と睡眠を切り替えて自然な眠りを誘うことで私たちの睡眠の質を高め快眠を促してくれている可能性があるのです。

若返りホルモン

私も35歳を超え女性として気になることが老化や衰えなのですが唾液には成長因子と呼ばれているグループが含まれていて、成長因子には女性に嬉しいアンチエイジングの効果があり若返りホルモンと言われています。

唾液に含まれているEGF(上皮成長因子)はシミやくすみ、ゴワつきを改善への効果が期待されていて、FGF(線維芽細胞成長因子)はシワやたるみの改善に効果があると言われていてお肌をピチピチ、つやつやに保ちます。

脳の神経の働きを助けるのがNGF(神経成長因子)であり、NGFは脳を活性化することや細胞の修復をし、脳の老化を防止したり若返らせたりする効果が期待されます。

唾液線から多く分泌されるラクトフェリンには活性酸素を除去する効果があり、細胞の老化を抑える抗酸化作用が期待でき、全身の細胞の老化を防ぎアンチエイジングが期待できます。

メンタル強化効果も

唾液線からはBDNF(脳由来神経栄養因子)という成長因子も分泌されていて、BDNFが低下と気分の落ち込みの関係が研究結果などで発表され、BDNFが増えることでストレス耐性が上がりメンタル強化に繋がるのではないかと期待されています。

このように唾液の持つパワーは底知れず素晴らしい力を全身に発揮しているのですが、やはり忘れてはいけないのは私たちのお口の健康をも守ってくれていることです。

お口の健康を守ってくれる唾液

私たちのお口の中は中性に保たれているのですが飲食により一時的にお口の中は酸性に傾き、歯の表面にあるエナメル質のカルシウムやリン酸などが溶けてしまう脱灰が起こってしまい虫歯の原因になります。

脱灰から歯を守ってくれているのが唾液で酸性に傾いたお口の中を中性に戻してくれる緩衝作用を唾液が担ってくれていて、溶けてしまった歯の表面を元の状態に修復する再石灰化を行ってくれています。

唾液は常に分泌され続けていて、お口の中の汚れやバイ菌を洗い流して清潔に保つ自浄作用もあり、私たちのお口の中が健康に保たれているのは唾液のおかげなのです。

唾液は1日に1.0〜1.5リットル分泌されているのですが、新型コロナウイルス感染症による自粛生活のストレスや顔の筋肉を動かさないことなどが原因で唾液の分泌量の減少が考えられます。

唾液をたくさん出す事を意識する

唾液の分泌を促すために耳の下や顎の下の唾液腺を刺激する唾液腺マッサージを行うことも効果的ですし、よく噛んで食べる、水分を補給してお口の中を潤わす、口呼吸をせずに鼻呼吸をするなどを意識して唾液の力を発揮させましょう。

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