材料のお話:②今はなきアマルガム

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時代の流れで消えゆくもの

こんにちは、香里園にある坂井歯科医院の今道です。

先日SNSで廃盤になったお菓子の特集を見たのですが、私が子どもの頃に食べていたものもありとても懐かしい気持ちになりました。時代の流れとともにこの世からなくなってしまうものや改良される物など多々ありますが、歯科医療現場も同様に昔使用していた材料や歯科器具が使用されなくなったり廃盤になったりすることがあります。

院長は昔から使用していて慣れ親しんだ治療器具があり、購入したくても廃盤になっていて購入できないので、壊れないように大切に使っている治療器具があります。

院長はご自身のカバンや靴、パソコンなどの身の回りの物も大切に使っていて新しい物を買っている姿をあまり拝見したことがなく、どんな物でも長期間大切に使用する院長を見ていると私たちも物を大切に使用しなければならないなと気が引き締まる思いです。

治療器具などは歯科医師の先生や歯科衛生士の使いやすい物や愛用している物を使用しますが、歯科の材料は日々進化しているため今は使用されなくなった材料もあります。

アマルガムは一般的な治療材料だった

今は使用されなくなった材料の代表とも言えるのが「アマルガム」と呼ばれる金属で、歯科治療で使用するアマルガムは水銀と銀、他の金属との合金であり虫歯治療時に銀歯としてよく使われていた詰め物の材料です。

1980年代までごく一般的に使用されていて今でも30代以上の患者さんのお口の中にアマルガムが入っているのをよく見かけますが、2016年4月の歯科診療報酬改定で保険診療から外され、坂井歯科医院では私が働き始めた約15年前にはもう使用されていませんでした。

現在はほぼ使用されていないアマルガムですがアマルガムは材料学的には非常に優秀な材料と言われていて、なぜかと申しますと一度虫歯治療した歯は二次カリエスと言われる治療した歯が再び虫歯になる可能性が高くなるのですが、アマルガムは抗菌性が高くアマルガムを詰めた歯の周りには虫歯がほとんどできず二次カリエスの可能性が非常に低いことが分かっているのです。

二次カリエスの可能性が低く健康な歯を守ることができるためアマルガムは非常に優れた材料であるにも関わらず、なぜ現在では使用されていないのでしょうか。

アマルガムの使用規制が世界中で進む

アマルガムの約半分を占めいている水銀が有害とみなされたためアマルガムを規制する動きが各国で進んでいて、歯科医療先進国のスウェーデンでは1987年に妊婦にアマルガムを使用しないよう発表し、1998年にはイギリスでも同様の発表がありました。

水銀には有機水銀と無機水銀があり、水銀が有害であるという認識が広まった水俣病の原因となったのは有機水銀で、歯科治療で使用されているアマルガムは無機水銀であります。

歯科で使用されている無機水銀は他の金属と混ざり合ったアマルガムの状態であれば非常に安定した物質となり銀歯としての役割を果たしてくれますが、わずかな刺激で気化してしまい蒸気水銀となることで有害物質になってしまいます。

蒸気水銀が体内に入り蓄積されることで体の細胞が生まれ変わる時などに必要な亜鉛の代謝を阻害してしまうなどの様々な実害が生じてしまう可能性がありますが、人体に悪影響を与えていたとしてもお口の中のアマルガムを除去することで解決するかどうかは個人差があるため一概には申し上げることができません。

蒸気水銀は除去する時に最も拡散するため対象の患者さんはもちろん、歯科医師や歯科医療従事者、近くの患者さんも蒸気水銀のさらされてしまうため必ずしも除去することが正しい判断ではありません。

アマルガムがお口の中に入っていてアマルガムを除去したい患者さんやアマルガムが入っている歯を削らないと治療できない患者さんは担当の歯科医師の先生とよく相談されて治療をされることをお勧めいたします。

アマルガムだけでなく歯科治療で使用する金属は金属アレルギーなどの影響もありできる限りメタルフリー(金属を使用しない)治療を坂井歯科医院では推奨していします。

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