
「フロスは意味ない」って記事を見たけど、本当なの?

毎日やっているのに、効果がある気がしなくて…

やらなくていいなら、正直やめたいんだけど…
「フロスは意味ない」「しない方がいい」という情報を見かけて、不安になった方は多いのではないでしょうか。
実際に2016年には、海外でフロスの効果を疑問視する報道もありました。
それでも「歯垢を落とす効果」そのものは、国内外のデータで確かめられています。
問題は「フロスに意味があるか」ではなく、「意味のある使い方ができているか」です。
この記事では「意味ない」と言われる理由、学会データによる検証、効果が出ない使い方の順で解説します。
うわさに振り回されず、科学的な根拠を知って自信を持ってフロスを続けたい方は、ぜひ参考にしてください。

「意味ない」と言われる理由にも、ちゃんと出どころがあるんです。一緒に確かめましょう!
「フロスは意味ない」は誤解!正しく使えば歯垢の除去率は8割まで上がる

「フロスは意味ない」というのは誤解で、歯垢を落とす効果は学会のデータで確かめられています。
歯ブラシだけで落とせる歯垢は、約6割程度。
フロスを併用すれば、除去率は約8割まで上がります。
厚生労働省も、「歯ブラシによる清掃は歯と歯の間には十分ではない」と明記しているほどです。
国内で歯間ケアを行う人も50.9%と、いまや2人に1人の習慣になっています。
ただし、正しく使えなければ効果が出ないのも事実です。
「意味ないと言われる理由」から順番に、ひとつずつ確かめていきましょう。
出典:令和4年歯科疾患実態調査|厚生労働省 / 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯間部清掃(デンタルフロス・歯間ブラシ)」
「フロスは意味ない・しない方がいい」と言われる4つの理由

「フロスは意味ない」という声が出る理由は、主に以下の4つです。
- 2016年に海外で「科学的根拠が弱い」と報道されたから
- 汚れが落ちた実感を得にくいから
- 「歯ぐきを傷める」という情報が広まっているから
- 使っていたのに虫歯や出血を経験したから
出どころがわかれば、不安の正体がはっきり見えてきます。
1.2016年に海外で「科学的根拠が弱い」と報道されたから

「意味ない」説のいちばん大きな出どころは、海外の報道です。
2016年8月、アメリカのAP通信が「フロスの効果を裏づける科学的根拠は弱い」と報じました。
過去10年分の25件の研究を検証した結果、研究の質が低いと判断されたためです。
同じ年にはアメリカの食生活指針からも、フロスの記載が削除されました。
この報道が日本でも紹介され、「フロスは意味ない」という言葉だけが広まっていきました。

報道の中身をどう読むべきかは、後半のデータ検証でくわしく解説しますね。
2.汚れが落ちた実感を得にくいから
フロスの効果は、目に見えにくいのが弱点です。
虫歯や歯周病を「予防できた」という結果は、その場では確認できません。
歯磨きのようなスッキリした爽快感も少なく、達成感が残りにくいのです。
結果が見えない行動を続けにくいのは、ごく自然な心理といえます。
数日でやめて「同じだった」と感じるのは、効果が出る前に判断しているだけかもしれません。
どれくらいで変化を感じられるかは、後半のFAQでお答えします。
3.「歯ぐきを傷める」という情報が広まっているから

「フロスで歯ぐきが下がる」「すき間が広がる」という情報を見て、不安になる方もいます。
実際に歯ぐきを傷めるのは、強い力で押し込む使い方をした場合です。
道具そのものが悪いわけではなく、原因の多くは力加減にあります。

包丁で手を切ることがあっても、包丁が悪いとは言いませんよね。それと同じです。
やさしくゆっくり通せば、歯ぐきを傷める心配はほとんどありません。
4.使っていたのに虫歯や出血を経験したから

「毎日使っていたのに虫歯になった」という経験も、「意味ない」と感じやすい理由です。
ただ、多くの場合はフロスが届いていなかった場所に原因があります。
とくに奥歯や歯と歯ぐきの境目は、汚れが残りやすい要注意ポイントです。
また、フロスで血が出るのは、歯ぐきが炎症を起こしているサインにすぎません。
「やらない方がよかった!?」と焦り、やめる理由になりやすいですが、実は出血はケアを続けるべきサインなのです。
なお、出血の原因に関しては関連記事「歯茎から血が出る5つの原因|受診する6つの目安や対処法も徹底解説」を参考にしてください。


「意味ない」と感じた背景には、必ず理由があります。次はデータで確かめていきましょう!
データで検証!フロスに効果はあるのか

ここからは、公的機関や学会のデータでフロスの効果を確かめていきましょう。
注目するのは、次の3つのポイントです。
- 歯垢の除去率は6割から8割に上がる
- 「エビデンスが弱い」は「効果がない」という意味ではない
- 歯ぐきの炎症とにおいには早い段階で変化が出る
数字の根拠がわかれば、うわさに振り回されずに自分の目で判断できるようになります。
1.歯垢の除去率は6割から8割に上がる

日本歯科保存学会の学会誌には、フロスの併用で歯垢除去率が61.2%から79.0%に上がったという報告があります。
さらに歯間ブラシまで加えた場合の除去率は、84.6%でした。
つまり、フロスを使用している人は、歯ブラシだけの人よりもプラス20%近くの歯垢を毎日落としていることになります。
なお、国の研究班による報告では、すき間が広い場合は歯間ブラシのほうが効果的という結果も出ています。

「なんとなく良さそう」ではなく、学会誌に数字が残っている効果なんですよ!
出典:日本歯科保存学雑誌48巻2号272〜277頁(2005年) / 厚生労働科学研究費補助金「歯間ブラシの歯周病予防効果に関するシステマティックレビュー」
2.「エビデンスが弱い」は「効果がない」という意味ではない
2016年の報道で使われた「エビデンスが弱い」という言葉には、注意が必要です。
これは「効果がないと証明された」ではなく、証明する研究がまだ足りないという意味です。
虫歯や歯周病は数年かけて進むのに、当時の研究の多くは観察期間が1〜3か月しかありませんでした。
短い研究では、長い時間をかけて進む病気の予防効果を証明しきれないわけです。
世界の35試験・約3,900人を統合した国際的なレビューも、2019年に発表されています。
そこでは「フロスの併用で歯肉炎や歯垢が減る可能性がある」と結論づけられました。
日本の公的な研究報告でも、歯間ケアの併用は歯ぐきの状態を改善するとされています。

「まだ証明しきれていない」と「効果がない」は、まったく別の話なんですよ!
出典:コクランレビュー2019(Cochrane Database of Systematic Reviews, CD012018) / 厚生労働科学研究費補助金「歯間ブラシの歯周病予防効果に関するシステマティックレビュー」 / 米国歯科医師会(ADA)「Dental Floss/Interdental Cleaners」
3.歯ぐきの炎症とにおいには早い段階で変化が出る

虫歯予防の効果はすぐに見えませんが、変化を実感しやすいポイントもあります。
それが、歯ぐきの腫れ・出血と口のにおいの変化です。
毎日続けると、歯ぐきの炎症は2週間〜1か月ほどで落ち着いてくることが多いとされています。
使ったあとのフロスがにおうのは、歯と歯の間で汚れが分解されていた証拠です。
歯ぐきの色が赤みがかった状態から、健康的なピンクに近づくのもわかりやすいサインです。
汚れを落とす習慣が続けば、においの元も少しずつ減っていきます。
なお、口のにおいの対策に関しては関連記事「【口臭対策】5つの応急ケアアイテムやにおいを根本から断つ習慣を解説」を参考にしてください。

出典:コクランレビュー2019(Cochrane Database of Systematic Reviews, CD012018)
フロスが「意味ない」状態になる4つの使い方

フロスに効果があっても、使い方しだいで本当に「意味ない」状態になってしまいます。
とくに多いのが、次の4つの使い方です。
- 週に1回程度しか使っていない
- すき間に通すだけで歯の側面をこすれていない
- 奥歯を飛ばしている
- 痛みを避けて浅くしか入れていない
心当たりがないか、確認してみてくださいね。
1.週に1回程度しか使っていない

歯垢は約24時間で成熟し、時間がたつほど落としにくくなります。
週1回のペースでは、フロスのない6日間の汚れがたまり続けることになります。
思い出したときだけの使用では、予防効果がほとんど期待できないでしょう。

毎食後にがんばる必要はないので、まずは1日1回を目安にしてください。
2.すき間に通すだけで歯の側面をこすれていない

もっとも多い間違いが、糸を入れて上下させるだけの使い方です。
フロスは通す道具ではなく、歯の側面の汚れをこすり落とす道具です。
糸を歯にそわせてアルファベットのCの形に曲げ、片側ずつ上下に動かします。
鏡を見ながら1か所ずつ丁寧に動かすと、こする感覚がつかみやすくなります。

この動きに変えるだけで、糸につく汚れの量が目に見えて変わりますよ。
3.奥歯を飛ばしている
虫歯や歯周病がもっとも起きやすいのは、実は奥歯の歯と歯の間です。
「届きにくい」「えずきそう」といった理由で奥歯を飛ばすと、いちばん大事な場所が手つかずになります。
前歯だけのフロスでは、リスクの高い場所を守れていません。
奥歯には、持ち手つきのホルダータイプ(Y字型)を使うと届きやすくなります。
いちばん奥の歯の後ろ側も忘れやすいので、あわせて意識してみてください。
4.痛みを避けて浅くしか入れていない

歯ぐきに当たるのが怖くて、途中で止めている方は要注意です。
歯垢がたまりやすいのは、まさに歯と歯ぐきの境目です。
浅い位置で往復するだけでは、いちばんの汚れだまりが残ってしまいます。
痛くない範囲で、歯ぐきの少し下までゆっくり糸をそわせるのがコツ。
なお、正しい通し方の手順に関しては関連記事「フロスの使い方を歯科医が解説!1日1回で虫歯・口臭を防ぐコツと子どもへの使い方」を参考にしてください。


使い方を1つ直すだけで、フロスは「手放せないアイテム」に変わりますよ!
フロスの効果に関するよくある質問

フロスの効果はいつごろから実感できますか?
歯ぐきの変化なら、早い方で2週間ほどが目安です。
毎日続けると、出血や腫れが少しずつ落ち着いてくるのが最初のサインになります。
一方で、虫歯予防の効果は年単位で積み重なるため、目に見えにくいのが特徴です。
検診のたびに歯ぐきの状態を記録してもらうと、変化が数字でわかりやすくなります。
「実感がない=効果がない」ではないので、まずは1か月続けて歯ぐきの変化を観察してみてください。
フロスを使うと歯と歯のすき間が広がりませんか?
正しい力加減で使うかぎり、フロスですき間が広がることはありません。
「広がった」と感じる多くは、腫れていた歯ぐきが引き締まり、本来の形に戻ったケースです。
見た目の変化はむしろ、炎症が落ち着いてきた良いサインといえます。
気になる場合は、力加減が合っているかを歯科医院でチェックしてもらうと安心です。
ただし、強い力でパチンと押し込む使い方は歯ぐきを傷つけるので避けてください。
子どもにもフロスは意味がありますか?
あります。
むしろ乳歯こそフロスの効果が大きいといえます。
乳歯は永久歯よりエナメル質が薄く、歯と歯の間から虫歯になりやすいためです。
隣の歯とくっついて生えてきたら、フロスの始めどきと考えてください。
仕上げ磨きだけでなく、フロスを通すまでが歯磨きの習慣として取り入れられるとベストです。
子ども用には、持ち手のあるホルダータイプが扱いやすいでしょう。
【まとめ】フロスは意味なくない!1日1回から歯の寿命は変えられる

「意味ないのかも」と迷いながら使うフロスと、根拠を知って続けるフロスでは、続けやすさが違います。
学会データが示すとおり、フロスは歯垢の除去率を約6割から約8割へ引き上げてくれます。
毎晩の数分が、将来の治療費や通院の負担を減らし、家族の歯を守る土台になるのです。
とはいえ、自分の使い方が合っているかどうかは、自分では確認しにくいもの。
坂井歯科医院では、検診とあわせてお口に合ったフロスの選び方や動かし方のコツをお伝えしています。

正しく使えているか不安なときは、検診のついでに気軽に聞いてくださいね!